3.5 タスク分割

分割統治法 (devide and conquer method)を行うエージェントについて説明します．次の手順で問題解決をします．

1. 問題を小さな問題に分割します
2. 小さな問題それぞれの解を求めます
3. それらの解を統合して元の問題の解を求めます

教科書p.73 "3.5 問題の処理手順を考える" の内容に相当します．

概要

• userは東北地方の温泉についてSearcherに質問します．
• Searcherは温泉情報を持っていませんが，ODB_aomori, ODB_iwate, ODB_akitaが温泉情報を持っていることを知っています．
• そこで，Searcherは3つのエージェントに対して質問し，その解を集め，統合してuserに返答します．

メッセージの流れ

プログラム

ODB_aomori.groovy

(3.2節と同じ)

ODB_iwate.groovy

class ODB_iwate extends ODB_aomori {
    def setup() {
        onsenlist = [
            [name:'金田一温泉', type:'単純泉',                 city:'二戸市', point:50],
            [name:'奥中山温泉', type:'ナトリウム炭酸水素塩泉', city:'一戸町', point:70],
            [name:'田山温泉',   type:'アルカリ性単純泉',       city:'安代町', point:60] ]
    }
}

• 温泉情報であるonsenlist以外はODB_aomoriと同じなので，ODB_iwateはODB_aomoriのサブクラスとして定義しています．
• extendsの後ろにクラス名を記述することで，そのクラスのサブクラスとして定義できます．

ODB_akita.groovy

class ODB_akita extends ODB_aomori {
    def setup() {
        onsenlist = [
            [name:'大葛温泉',   type:'カルシウム硫酸塩泉', city:'比内町', point:50],
            [name:'雪沢温泉',   type:'硫酸塩泉',           city:'大館市', point:70],
            [name:'湯ノ沢温泉', type:'アルカリ性単純泉',   city:'森吉町', point:100] ]
    }
}

• ODB_akitaもODB_aomoriのサブクラスとして定義しています．

Searcher.groovy

class Searcher extends TAG {
    def loop(msg) {
        if (msg._p=='request-information' && msg.ninkiOnsen=='tohoku') {
            // 3つのエージェントにrequest-informationを送信し，全ての返事を待つ
            def replies = request(['ODB_aomori', 'ODB_iwate', 'ODB_akita'],
                                  [_p:'request-information', point:'max'])
            replies.each{println it} // requestの返事を表示する
            def maxpoint = replies.max{it.point} // repliesの中からpointが最大の要素を探す
            reply(msg, maxpoint)
        } else {
            reply(msg, [_p:'sorry', msg:msg])
        }
    }
}

• 5行: request()の第1引数にエージェント名のリストを指定すると，それら全てに第2引数で指定したメッセージを送ります．その後，全てのエージェントから返答があるまで，そこで停止します．
• repliesはリストです．要素はエージェントからの返答メッセージです．リストに対しては，次の操作を行えます．
  • 7行 replies.each{println it} : repliesの要素それぞれを表示します．
  • 8行 replies.max{it.point} : repliesの要素の属性pointに着目して，その値が最大の要素を返します．

動作方法

• エージェントSearcherにメッセージを送って温泉データを検索します．
• 東北地方の人気の温泉の検索
  • [_p:'request-information', ninkiOnsen:'tohoku']を送ると，次のデータが返ってきます：
    [_p:'inform', name:'湯ノ沢温泉', type:'アルカリ性単純泉', city:'森吉町', point:100, _f:'Searcher']
• table-seq ボタンを押すと，表形式ではなくメッセージ図形式でメッセージのやり取りを確認できます．もう一度table-seq ボタンを押すと，表形式に戻ります．

課題

1. 宮城県の温泉データを保持するエージェントを追加し，検索できるようにしてみましょう．エージェントの追加は次の手順で行います．
   1. show files をチェックします
   2. New を押します
   3. 新しく作成するエージェント名.groovyと入力します
   4. あるいは，エージェントフォルダ(インストールしたディレクトリ内のagentというフォルダ)に新しくファイルを作成することでも行えます
2. 検索の範囲を地域名ではなく県名で指定できるようにしましょう．現在はtohokuという地域名で検索していますが，例えば[_p:'request-information', ninkiOnsenFrom:['akita', 'aomori']]のように県名を指定できるようにしてみましょう．

Groovy文法情報

REPL環境

次のどちらかでGroovyのREPL環境を開くことができます．小さいプログラム片を試すときに便利です．

(1) Webアプリ
https://groovyconsole.appspot.com/ を開きます．
上方にコードを記述して éxecute script を押すと実行結果が表示されます．

(2) Groovy Console
$ java -cp tagserver.jar groovy.ui.Console

• javaにパスを通しておいてください
• インストールディレクトリ以外の場所で実行する場合は-cp に続けてtagserver.jarの場所を指定してください

リスト操作

def list = ['akita', 'aomori']
def agent = []
list.each{agent.add('ODB_'+it)}
print agent